2018年4月10日
被災地で起業して7年「事業体としてもっと強くならなければならない」
7年前、被災地で起業による地域再生を目指した人たちがいます。農水産物の六次化、コミュニティ形成といったそれらの事業は、震災で浮彫りになった過疎化や高齢化、経済縮小など地域の喫緊の課題と深く関わるものばかりでした。
震災前から女川町のまちづくりに関わっていた湯浅輝樹さんは、被災後の女川の惨状を見て絶句しました。「働く場所を失った漁業者はこの先どうなるのだろう。何か、新たな仕事をつくり出さなければならないと思った」と当時をふり返ります。
4月、湯浅さんは仙台の木工クリエイターと一緒に、女川で「小さな復興プロジェクト」を立ち上げました。借りた倉庫に木工機械と原材料を持ち込んで地元の人を雇用し、魚の形の木工品「onagawa fish(女川フィッシュ)」を作って販売したのです。震災直後の起業は明るい話題としてメディアに採り上げられ、商品は飛ぶように売れました。作り手は被災した人たち。「買ってもらうと勇気が湧く」と喜び合ったそうです。
被災地で生まれた復興商品の多くはいま、"支援"から"ニーズ"へと局面が変わりつつあります。「一部の方々は現在も応援の気持ちで購入してくださっているが、一方でどんなに良いモノを作ってもニーズが無ければ商品は売れない。いまそこで苦労している」と話します。
人々から震災の記憶が薄れ、復興が進むにつれて、厳しい状況に直面することも増えました。「女川町のまちづくりに覚悟を持ってのぞんでいる」という湯浅さん。社名「株式会社onagawa factory(女川ファクトリー)」には、木工品・革製品・食品のものづくりで新しい女川の文化を発信していくとの思いが込められています。「厳しい状況は続くが、このまちに事業を残していくには、事業体としてもっと強くならなければならない」と決意を新たにしています。
株式会社onagawa factory(女川ファクトリー)公式HPはこちら
情報提供/みやぎ生協
3.11を忘れない ~被災地の今~ 第55回はこちら
▲湯浅輝樹(ゆあさ・てるき)さん(株式会社onagawa factory代表取締役)
▲女川フィッシュの他、ゆずのチーズケーキや革製品が並ぶ店内。神棚は縁起を大切にする漁師町ならではのもの。