漁場から加工を開始するまで15分以内、
ふっくらとしらすを炊き上げて、急速冷凍するまで1時間。
「産直 四国佐田岬産釜あげしらす」がどのように
皆さんの元へ届くのかをご覧ください。
いわしの稚魚であるしらす。「産直 四国佐田岬産釜あげしらす」は、愛媛県最西端の西宇和郡伊方町に本社を置く朝日共販株式会社で作られています。訪ねると、漁に出る海の目の前にしらすの加工場がありました。
「海でとれる魚の大きさや色は、自分たちでコントロールできるものではありません。私たちにできることは、少しでも鮮度の良いものをお届けすること。漁場からしらすの加工を開始するまでは15分以内と決めています」そう話すのは代表取締役社長の福島大朝さん。「生産者数は減り、水産業全体の低迷を肌で感じていますが、おいしいしらすをどうやって皆さんに届けるかが、私たちの使命であり生き残る道でもあるんです」と続けます。
朝日共販の強みは、すべてを自社グループで完結していることです。漁場と工場が直結していて、しらす漁に出る漁師20人も社員です。他に、漁で使う目が細かい特殊な網を作れる会社が減ってきたと知ると、自社で作れるようにするなどしてきました。
「日の出とともに漁を開始するため船出は朝4時頃。しらすがいるときは、何往復もして日の入りまで漁をします」と福島さん。
漁師は3チームに分かれ、1隻がレーダーで魚の位置を見て、2隻が対になり網を広げて漁をします。とれたしらすを、船の上で海水と氷をバランス良く入れた水槽(イケマ)に入れ、陸に戻るとすぐに工場へ運び入れます。
「目指しているのは、食べたときに一口目でおいしい、と感じる釜あげしらす。新たまねぎの季節に、スライスしたたまねぎとしらすをぽん酢しょうゆ和えにするのが好きです」(福島さん)
「私も私の子どもも、そのまま食べたり、ごはんにのせてたまごと食べるのが好きです」(阿部さん)
加工については、工場長の阿部慎一郎さんに話を聞きました。
「水揚げ後は鮮度がどんどん落ちていきますから、いかに早く釜あげにするかです。工場では朝6時頃から準備して、しらすの到着を待ちます。漁師たちと電話で連絡を取り合って、漁獲量を先に聞いて段取りを整えておきます」
一次加工では、塩を入れた対流釜でふっくらとしらすを炊き上げて、独自の冷却ファンで1分で20度にまで一気に下げます。そして急速冷凍して冷凍倉庫で保管します。ここまでで、水揚げから1時間しか経っていません。
「あとは生産スケジュールに合わせて、解凍、選別、パック詰めをしていきます。しらす以外の魚や木片・魚網などの混入がないように、異物吸引器を片手に何度もチェックしています。休憩を入れながら、責任を持ってやってもらっています」と阿部さんは続けます。
「『なんでここのしらすはおいしいの?』って言われたときが一番うれしいです。この先もずっとしらすをお届けできるように未来のことを見据えて、海の魅力を伝えつつ、仕事をしていきたいですね」と最後に福島さんが話してくれました。
緻密な連携プレーによって、海でとれたばかりのしらすを「産直 四国佐田岬産釜あげしらす」に加工して送り出しています。ぜひ食卓で、味わっていただきたい一品です。
海中に広げておいた網にしらすが入ってきたら引っ張り上げ(写真A・B)、クラゲなどの他の生き物を大まかに出してから船の中央に設けられた水槽(イケマ)に一時保管します(C)。とれたてのしらす。まだ他の魚も交じっています(D)。陸でスタンバイしている社員がしらすを移して、フォークリフトで工場へ直行します(E)。
100度の熱湯と塩の入った対流釜でふっくらと炊き上げ(写真F)、独自の冷却ファンで一気に20度にまで下げます(G)。それを-50度で急速冷凍し、うま味をぎゅっと凝縮して冷凍倉庫で保管します。これで原料が完成です。
原料は自社開発の静電式解凍機で、しらすの水分やうま味の低下を防ぎながら、微妙な空気の振動によって解凍します。選別工程では4人1組で(写真H)、ペン先ほどの細い異物吸引器を使いながら異物を逃さず取り除きます(I)。
次に計量・パック詰めし、目視点検しながら最終チェック、包装機の直前でも検品しています(J)。そして一晩冷凍してから翌日に梱包します。この間、1ロットごとに、品質管理部が塩分や水分濃度、一般細菌、大腸菌群などの検査も行っています。
【広報誌2023年9月号より】