“いつもあるのが当たり前の野菜だから、
質はもちろん、1年のうちでできるだけ長く供給したい”。
話を聞くと、生産者はこんな思いで「産直 にんじん」を育てていました。
定番野菜のにんじん。組合員の皆さんはお好きですか? 産直 にんじんの産地の一つ、農事組合法人 多古町旬の味産直センター(千葉県香取郡)の生産者、有限会社ゆうふぁーむの川島健次さんの畑を訪ねて、話を聞きました。川島さんは15年ほど前に就農し、現在は約20人でさまざまな野菜を特別栽培※1で育てています。そのうちの6割強がにんじんです。
「これからお届けするのは秋冬にんじんで、春にんじんとは育て方も違います。寒い季節になってくると、甘味が増してきますよ。私たちは、1年を通してできるだけ長く出荷する方針でにんじんを作っています」と川島さん。にんじん畑は80カ所に分かれ、東京ドーム4個分の広さがあります。
秋冬にんじんの種まきは夏ですが、土づくりは春から行っています。
「春にからし菜を植えて2カ月育てたら、それを土に漉き込んで土壌改良材にします。からし菜の辛味成分が、にんじんの病気に効き、シミ対策ができます」
連作障害※2予防にもなり、土もふかふかになるのだといいます。最も大変な仕事は、種まき後の水まき。
「種まき後に水が切れてしまうと発芽しません。また、強い雨が降ると土が固まって芽が出なくなってしまうし、このときはいつも大雨が降らないことを祈っていますね」
発芽までの水管理で、にんじんの出来は7~8割決まると川島さんは話します。
“身近すぎる”ともいえるにんじんについて何を目指せばいいのか、川島さんは考えてきました。
「店頭に立って直売の経験をしたとき『にんじん買ってください!』と言ったら『言われなくても買うよ』って返されたことがあったんです。そうだなって腑に落ちた。だから種まき時期を少しずつずらして、春はできるだけ早く出荷して、冬は最後まで出す。質もですが、安定供給も大事だと思っているんです。
生産コストは上がっていますが、にんじんはあまり高いと買ってもらえません。だから技術を高めて効率も良くして作っていきたい。そして、『あそこの産直にんじんはおいしいよね、質がいいよね』って言ってもらえるものを作っていきたいですね」と思いを聞かせてくれました。
川島さんの好きな食べ方はにんじんだけのかき揚げ。「冬のにんじんは味がしっかりあるのでぜひ!」と笑顔で語りました。
産直 にんじんを、お好みの調理法で食卓に登場させてみてはいかがでしょうか。
4月に有機分の緑肥として、からし菜を植えて育てます。1mほどに育ったら土に漉き込みます。期間を空けて何度か耕し、畑の肥やしにして土を改良し、にんじんの種を植える準備をします。
7月下旬から8月末までの間、トラクターに種まき専用の機具を取り付けて、6cm間隔で種まきをします(写真A)。天気を見ながら計画を立てています。種は「コート種子」といって、まきやすくするために薬のカプセルのような見た目。水で割れる仕組みです。
種まき後、水が切れてしまうと発芽しないため、畑に穴のあいたホースを引いてチョロチョロと水をまきます。種をまいた畑を水まきしながら順番に回り、約1週間後に発芽します。
2葉、3葉出れば、にんじんの苗は安定してひと安心(写真B)。小さな耕運機のような機械で土と土の間をかき混ぜて土に空気を入れたり、除草作業や防除をします。管理を2カ月くらい続けます。病気を治す薬はあまりないので、予防が大事です。
種まきから約110日、10月下旬からが収穫の時期(写真C)。専用の掘り取り機で、葉をつまんで抜き、葉を切って収穫、重さの選別も行います(D)。表面にシミやイボがないかは人の目で確認しています。専用の洗い機で洗ったらコンテナで出荷。そして加工場で検品後に梱包して完成です(E)。
【広報誌2023年11月号より】