屋外に整列した無数のつぼが並ぶ「つぼ畑」。鹿児島県霧島市福山町では、蒸した米・米麹・地下水のみを原材料とし、陶器製のつぼで製造する黒酢造りが江戸時代後期に始まり、現在まで受け継がれてきました。この黒酢とりんご果汁などをブレンドし、すっきり飲みやすく仕上げた商品が「CO・OP 鹿児島の黒酢ドリンク」です。黒酢を醸造する坂元醸造株式会社を訪ね、醸造技師長の坂元宏昭さんに話を聞きました。
「黒酢は太陽の光を浴びながら1年以上かけて造られます。つぼ畑は町内10カ所に分かれていて、醸造用のつぼ(54l)は全部で5万2000本あります。14人の醸造技師で仕込み・発酵・熟成を管理しています。自然の力で時間をかけて発酵させると、コクがありまろやかな味わいの黒酢ができます」 醸造技師になるには社内試験を通過する必要があり、最低でも5年はかかります。
「五感が大事な仕事です。仕込み後は、すべてのつぼを1週間に1回撹拌して状態を確認しながら、熟成を促すために少し空気に触れさせます。一つ一つ状態の違うつぼを見ていくのは子育てみたいですよ」と笑顔で話します。自然の力で造るからこそ、つぼによって発酵の進み方は異なりますが、醸造技師が最終的に同じ状態へ仕上げていきます。
「26年この仕事をしていますが、黒酢造りには正解がなく、奥が深い仕事です。黒酢は特徴がある商品なので、飲みやすい商品になって組合員の皆さんの元へお届けできることがとてもうれしいです」と坂元さんは聞かせてくれました。
坂元醸造で丹精込めて造られた黒酢を、「CO・OP 鹿児島の黒酢ドリンク」に仕上げているのは、「CO・OP ただの炭酸水」などの製造元としてもおなじみの、株式会社ふくれん(福岡県朝倉市)です。話を聞かせてくださったのは、遠藤実夏さんと古川慧さんです。
「黒酢の味をしっかり感じていただきながらも、りんご果汁を20%加えて飲みやすく、すっきりフルーティーに仕上げています。飲み切りサイズですので、のどが渇いたとき、お風呂上がり、ピクニックやレジャー、お弁当など、いろいろな場面でご利用いただけると思います」と古川さん。
1本につきつぼ造り黒酢を6ml(全体の約5%)使用して、黒酢を無理なく飲める味わいに仕上げています。
「『おいしさと安全』を2つの柱に、品質を守って製造しています。私たちはいつも、親子三代の会話のきっかけになるような商品づくりを目指しています。学習会などを通して、組合員の皆さんの声を聞きながら商品づくりをしていきたいです。これからもご家族皆さんで飲んでいただける商品であってほしいと思っています」遠藤さんが最後に笑顔で話してくれました。
2つの会社の技術が集結した「CO・OP 鹿児島の黒酢ドリンク」、ぜひお手に取ってみてください。
黒酢は「仕込み」「糖化・アルコール発酵」「酢酸発酵」「熟成」の4つの工程で造られます。発酵管理の見回りでは、醸造技師が五感を駆使して匂いと表面の「顔色」を見ます(写真A)。熟成の管理では状態を確認し、混ぜて空気に触れさせて熟成を促します(B)。一面に同じ大きさのつぼが並ぶ「つぼ畑」の眺めは圧巻です(C)。
株式会社ふくれんの製造工場では、調合タンクで原材料を調合し(写真D)、異物除去、殺菌を経て充填機で充填し(E)、充填機から出てきた商品(F)に賞味期限を印字し、ストローを付けて箱詰めして出荷します。
【広報誌2023年7月号より】