洗剤と水環境について

1.水環境と洗剤

  1. 水環境(水質・水量・水生生物・水辺地)の維持・管理は、環境保全の重要な課題です。水環境に負荷を与えている要因の一つが家庭からの生活排水(洗濯・台所・風呂・トイレなど)です。
  2. 洗剤は家庭から下水道等に排出される化学物質の中では量の大きいものです。家庭からの生活排水が直接河川等に排出されないよう下水道や浄化槽を整備することが重要です。全国的に下水道や浄化槽の整備が進み、生活排水を河川等に直接排出することは減少しており、全国の汚水処理人口普及率は90.9%に到達しています(2018年度末 国土交通省・農林水産省・環境省調べ)。
  3. 代表的な洗剤の界面活性剤であるLAS、高級アルコール系(AE、AES)、脂肪酸塩(せっけん)は、「生分解性」や「有機汚濁負荷」「水生生物への影響」の水環境への影響評価ではそれぞれ一長一短がありますが、通常の河川への排水では問題はないことがわかっています。
  4. 洗剤は使用量を増やせば、汚れが落ちる効果が増大するものではありません。水環境への負荷を減らすためにも、適正な使用量を把握し量って使うことをお勧めします。
  5. 浄水場からの配水や下水処理では電気を使用します。CO2排出量削減の観点からも、洗濯量や回数を減らすことを呼びかけます。

主な界面活性剤の水環境への影響

環境影響の指標 各界面活性剤の評価
生分解性 水環境中の微生物による有機物の分解されやすさ 一般的な生分解試験では脂肪酸塩(せっけん)、高級アルコール系(AE、AES)、LASの順で分解されやすい結果となるが、せっけんは水温が低い硬水では分解されにくいため、通常の水環境では最も分解されにくい。
有機汚濁負荷(BOD) 水環境中の微生物による有機物分解に消費される酸素の量 脂肪酸塩(せっけん)は高級アルコール系(AE、AES)、LASに比べ分解に要する酸素の量が大きい。
水生生物への影響(魚毒性) 水環境中の化学物質の魚介類(水産動物)に対する毒性 脂肪酸塩(せっけん)は界面活性剤としてのもともとの能力が低く、水道水ではせっけんカルシウムという固形物になるためエラ呼吸をする魚には作用しにくくなる。高級アルコール系(AE、AES)、LASは条件に左右されずにある程度の界面活性効果を示すため魚への影響が相対的に大きい。

※「高級アルコール」とは、品質が高級ということでなく、炭素の数が12~18個からなる油のことをいいます。

2.洗剤の取り扱いについての考え方

  1. 水環境への負荷においては「より良い洗剤」という考え方はできません。一方、パーム油・ヤシ油などの洗剤の原料採取そのものが地球環境に大きな影響を与えています。洗剤の原料採取から製造プロセス、流通、消費、廃棄に至る環境負荷を総合的に評価するライフ・サイクル・アセスメント(Life Cycle Assessment)の考え方をベースに、より環境負荷の低い洗剤の開発・普及を進めます。
  2. 洗剤は粉末から液体へ、そしてコンパクトに、また用途による選択肢の幅が広がり、洗浄力も向上しています。
    組合員の選択に役立つ正確な情報提供を行いながら、洗い物の種類や汚れの種類、肌への相性などに応じて選んでいただけるよう幅広い品ぞろえを行います。

【参考】主な界面活性剤の種類と洗剤特性

家庭用品品質表示法に基づく分類(洗濯用) 特徴
洗濯用せっけん 界面活性剤として100%せっけん分(脂肪酸ナトリウムまたは、脂肪酸カリウム)を使用しているもの ・冷たい水には溶けにくいため、お風呂の残り湯を使うとよい
・十分に溶かしてから使うと、高い洗浄力を発揮する
・やわらかな仕上がりになる
洗濯用複合せっけん 界面活性剤の70%以上が、せっけん分(脂肪酸ナトリウムまたは、脂肪酸カリウム)を使用しているもの ・溶けやすくするためや、機能性を高めるためにせっけん以外の界面活性剤を配合
・せっけんカスが衣類に付着することを防止するため、せっけんカス分散剤などを配合
・せっけんよりも溶けやすく、低温でも洗浄力を発揮
洗濯用合成洗剤
高級アルコール系
界面活性剤が、動植物性油脂や石油から精製される高級アルコールからできている ・水に溶けやすく、皮脂や油汚れに高い洗浄力を発揮
洗濯用合成洗剤
LAS系
界面活性剤が、石油から作られる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(ナトリウム)(LAS)の洗剤 ・水に溶けやすく、皮脂や油汚れに高い洗浄力を発揮