5~6月のらっきょう収穫の様子。鳥取砂丘に隣接する畑の向こうに、日本海が広がります。
鳥取県鳥取市福部町は、らっきょうの大産地。
大正時代から続く気候風土を生かした栽培は機械化が難しく、
現在も多くの工程が手作業で行われています。
カレーライスのお供に欠かせない、という方も多いらっきょう。全国でも有数の産地である鳥取県鳥取市福部町は鳥取砂丘に隣接し、砂地の畑が広がります。通常の土壌と比べ、保水力も肥料の吸収率も乏しく、夏は地表60度以上、冬は氷点下という過酷な環境。大正時代にいろいろな作物を試した中で、生命力の強いらっきょうだけがうまく育ち、栽培が定着しました。2014年に栽培開始から100年を迎え、2016年には「鳥取砂丘らっきょう」「ふくべ砂丘らっきょう」として、その土地ならではの名産品を守る農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。
現在はおよそ100ヘクタールの畑で52戸の農家がらっきょうを栽培していて、5月下旬から約1カ月の間、全国に向けて出荷されます。「私たちが生産しているのは、肉質がしっかりした長卵形の『らくだ種』のみ。砂地だからこそ皮が薄くて身が締まり、シャキシャキとした食感につながります。また『パールホワイト』と呼ばれる色の白さも特徴です」と話すのは、鳥取いなば農業協同組合(JA鳥取いなば)で福部らっきょう生産組合の会長を務める横田仁志さんです。
JA 鳥取いなばの生産者の一人で、福部らっきょう生産組合会長 横田仁志さん
「特に重要な工程は植え付け作業。深さが大事で、浅いと日光が当たり緑がかった色になるし、深いと芽が出にくく球が増えません」と説明します。起伏が激しい福部町の砂丘畑では植え付け機を動かすのが難しく、真夏の植え付けは1粒1粒が手作業です。
秋の開花、冬の降雪を経て、5月中旬から収穫開始。根を残した「砂付」と、根と茎を切り落として薄皮をむいた「洗い」に選別します。1球ごとに形も大きさも違うため、これらも手作業。すぐに芽が伸びてしまうため、素早く丁寧に作業して出荷します。
産地でも、定番の食べ方はやはり甘酢漬け。「今はらっきょう酢が便利ですが、昔は家ごとに漬け方が異なりました。自分の家で漬けたものを親類にあげて、おいしかったと言ってもらえるのが楽しみ」と横田さんは笑います。
さらに、この時季だけの生での味わいもおすすめです。そのままでは辛みが強いものの、刻んでゆで卵と合わせたタルタルソースや、素焼き・ベーコン巻き・天ぷらなどの加熱料理もおいしいとのこと。この時季しか出回らない、フレッシュならではの料理に挑戦して、旬のおいしさを感じてみませんか?
元肥を入れ、7月下旬から8月末までらっきょうを1球ずつ植え付けます。地表温度が60度以上にもなる猛暑の中、畝を作って10~15cmの深さに手作業で植えます(写真A)。「近年は高温のため植え付けが長期化し、9月中旬頃までかかることもあります」
収穫まで4~5回追肥しつつ、除草や病害虫の防除を行います。11月上旬が開花の季節。赤紫色の花畑が広がります(写真B・C)。冬は雪の下で休眠状態に。3月上旬の雪解けとともに目覚め、急速に成長します。
球が固く締まってくる5月15日過ぎくらいから、15cmほどを残して葉を刈り取り、トラクターで掘り起こして収穫します(写真D)。1球ずつ植えたものが、収穫時には約6~7球に分球しています。

「砂付」は茎と根を長めに残し、「洗い」は根と葉をすべて切って薄皮を取り除きます(写真E)。すべて「切り子さん」(根切り作業をする人)による手作業。「近年は人手不足ですが、うちでは30人ほどの切り子さんに作業してもらっています」

出荷が済んだら、種付け用に残しておいたらっきょうを収穫。植え付けに適した硬く大粒の球を選び、7月下旬からの植え付けまで冷暗所で保管します。
【広報誌2026年5月号より】