収穫後、貯蔵庫で寝かせることで、でんぷんが糖に変わり、特有の甘さが生まれるべにはるか。加熱することで、さらに蜜のような甘さが加わり、ねっとりとした食感が楽しめます。
今回は、千葉県にある多古町旬の味産直(たこまちしゅんのあじさんちょく)センターを訪れました。
※1月~3月、一番甘さがのり、おいしい時期に多古町旬の味産直センターから出荷される「べにはるか」は、「あまゆう」という商品名でご案内します
※べにはるかは、常陸野産直センター、房総食料センターなどからもお届けしています
「おいしかった」という組合員の声が一番の励みという佐藤夫妻
「初めて食べたとき、こんな甘いさつまいもがあるのかと本当に驚きました。このおいしさをコープの組合員の皆さんに早くお届けしたいと思い、全国に先駆けて2010年から栽培を始めました」。そう話すのは、べにはるか生産者の佐藤一夫さん。父親の代からさつまいもの生産一筋の佐藤さんは、多古町旬の味産直センターさつまいも部会の部会長です。40年余りの経験の中で育てたさつまいもの中でも、べにはるかの蜜のような甘さと、ねっとりとした食感は格別だといいます。
多古町旬の味産直センターのある地域は、さつまいも作りに適した火山灰土で覆われています。火山灰土はサラサラと軽く、水はけの良さが特徴。さつまいもは、一晩でも水に漬かると腐ってしまうため、この水はけの良さはとても重要です。
「春一番が吹くと、土が舞い上がって、もう大変! 車で走っても前が見えないし、農作業をしていると、服の中まで真っ黒になるよ。でも、この土がさつまいも作りには欠かせない。うちの畑の土は、じゅうたんみたいにふかふかだよ」と笑います。
佐藤さんの土作りは、冬の間、土の通気性や水はけを良くするために麦を育てることから始まります。育った麦は、米ぬかや油かすなどの肥料と一緒に畑に混ぜ込んで発酵させ、栄養たっぷりな畑を維持しています。
土の中のさつまいものイメージ。同じ深さにすることで均一に温度が伝わり、大きさもそろうのだそうです
土作りが終わると、4月中旬~6月上旬にかけて、約12万5千本の苗を一本一本、手作業で畑に植えていきます。苗を植えるコツは、垂直ではなく、少し斜めに植えること。さつまいも同士がぶつかりにくく、形がきれいにそろい、たくさん育つのだそうです。
「植え方は、気温に合わせて変えるのがポイント。4月は気温が低いので浅めに、6月は暑くなってくるから気持ち深めに植えて、苗が成長しやすいように手助けしているよ」と細かな調整は欠かせません。
つるを刈った畑を収穫機が土を掘り起こしながらゆっくり進みます。さつまいもを傷つけないよう、つるから1本ずつ手作業で外します
「朝、苗を植えると、日中の日差しで葉が枯れてしまうことがあるから、太陽が沈むころから植え始めます。今年は蛍を見ながら植えたな」と妻の和江さんと笑います。
「自分の都合じゃなく、さつまいもに合わせること。このことをずっと大切に守りながら、さつまいもを約40年間、毎年育ててきました」
貯蔵期間を60日以上に設定し、しっかり甘みを蓄えたものだけを出荷しています
畑に植えてから約5カ月。収穫を迎えたべにはるかは、貯蔵庫で2カ月以上保存し、最もおいしくなってから出荷されます。貯蔵庫は、年間を通じて13~15℃に保つように管理され、そこでじっくり寝かせることで、夏の間に蓄えたでんぷんが糖に変わり、掘りたての状態からさらに甘みを増していきます。
加熱すると、ねっとりとした食感になり、蜜のように感じられるほど甘くなるべにはるかを、ぜひお試しください。